ひびですか?骨折ですか?

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外来でよく聞かれる質問に、
「これは “ひび” ですか? “骨折” ですか?」
というものがあります。
結論から言うと、
“ひび” も骨折です。
■ 骨折って何?
骨折の定義は「骨の連続性が途絶えた状態」です。したがって、骨に亀裂が入っていても骨折、へこんでいても骨折、剥がれていても骨折に含まれます。
日本語では、
• ひび=軽症
• 骨折=重症
というイメージがありますね。
医学用語では、
・不完全骨折 (incomplete fracture):
部分的に骨の連続性が途切れた状態
・完全骨折 (complete fracture):
全体的に骨の連続性がが途切れた状態
という分類があります。
不完全骨折がいわゆる “ひび” に相当すると考えてよいでしょう。
また、
・非転位型骨折( non-displaced fracture ):
ずれのない骨折
・転位型骨折( displaced fracture ):
ずれのある骨折
という分類もあります。
ずれがないと、レントゲン上はひびのように見えることがあります。
しかし、非転位型の完全骨折をひびと捉えるのは危険です。あとからずれてくることがあるためです。
■ 見逃される骨折
下の図を見てください。手首の骨 (橈骨: とうこつ)の不完全骨折です。
初診時の写真ではよく見ないとわかりませんが、1ヵ月後には骨折したところが白く変わっています。
後になって、はっきりと骨折だと言える場合もあるのです。

整形外科医はさりげなく、しかし、とても注意深くレントゲン写真を見ています。
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■ なぜ「ひび」と言いたくなるのか?
患者さんが「ひび」と言いたくなる背景には
・重症ではないと思いたい…
・仕事や家事を休みたくない…
・骨折と言われると不安になる…
といった気持ちや事情があるのかもしれません。
しかし、ひび=軽いけが、 とは限りません。ひびでも、場所によっては治りにくいことがあります。
代表的なのは、
・手の舟状骨骨折 *1
・アスリートの脛骨前縁疲労骨折 *2
・足の第5中足骨基部骨折 *3
などです。
■ 骨折治療で大切なこと
骨折したときに重要なのは、
• どの部位が
• どれくらいずれていて
• どんな治療が必要で
• どれくらいで治るのか
といった治療に関係する情報を知ることです。
治療の基本は「折れた骨を動かさない」こと。ギプス固定などで治療することを「保存療法」と呼びます。
固定期間には個人差がありますが、不完全骨折は比較的短くすむことが多いです。*4
治療中は、骨折部がずれてこないか、骨ができてきているかを確認するため、定期的にレントゲン撮影を行います。
途中で手術が必要と判断することもあります(保存療法→手術療法)。
■ 治るまでの目安
「痛みが軽くなる」までは2-3週間、
「骨がしっかりつく」までは2-3ヵ月が目安です。
子どもはだいたいその半分の期間で治ります。
「ひび」か「骨折」かという呼び方にこだわるより、骨が治るまでの期間をどう過ごすか、日常生活の制限をどう乗り越えるかを医師といっしょに考えることが大切です。
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*1 Surucu S, Kehribar L. Non-displaced scaphoid waist fractures: percutaneous screw fixation versus cast immobilization. Cureus 2022; 14(2): e22684.
*2 Green SA. Art in Science: The firebird and the dreaded black line. Clin Orthop Relat Res 2024; 482(7): 1135-1136.
*3 Kavanagh AM, et al. Rate of bony union after Jones fracture fixation in the general population. J Foot Ankle Surg 2025; 64(4): 481-487.
*4 de Bruijn MAN, et al. Cast immobilization duration for distal radius fractures, a systematic review. Eur J Trauma Emerg Surg 2024; 50(4): 1621-1636.
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