骨粗鬆症治療前に歯科受診

お知らせ
骨粗鬆(しょう)症の治療と大切なお口のケア ( 口腔ケア )について解説します。
■ 骨折を防ぎ「健康寿命」を延ばす
骨粗鬆症は、骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。
大腿骨の骨折は、寝たきりや要介護の原因となり、生命予後にも影響します。
そのため、骨を強くし骨折を防ぐ治療は「健康寿命」を延ばすうえで非常に重要です。
治療には、ビスホスホネートやデノスマブなどの骨吸収抑制薬 ( ARA: antiresorptive agent ) が広く用いられています。*1

これらのお薬は骨折予防効果が高い一方、副作用として「あごの骨の壊死 ( 顎骨壊死 )」が知られています。最初は高用量のビスホスホネート点滴静注を受けたがん患者に発生したという、わずか3ページの論文報告でした。*2
その後、低用量の経口ビスホスホネートを使用した骨粗鬆症患者でも発生することがわかりました。また、デノスマブやロモソズマブ、さらには抗がん薬として使われる血管新生阻害薬でも発生するため、最近では薬剤関連顎骨壊死 ( MRONJ* )と呼ぶようになりました。
* MRONJ : medication-related osteonecrosis of the jaw
しかし、正しい知識と口腔管理があれば、過度に心配する必要はありません。
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■ 顎骨壊死 ( MRONJ ) はどのくらい?
薬の副作用を説明すると多くの患者さんが不安に感じます。
“ 壊死 ” という言葉は、とりわけイメージが悪いように思います。
しかし、骨粗鬆症治療で使用する “ 低用量 ” では、MRONJ の発生頻度は極めて低いことが明らかになっています。
北海道東部 3 つの三次医療圏 ( 十勝医療圏、釧路・根室医療圏、オホーツク医療圏 ) で行われた調査があります。*3
それによると、経口ビスホスホネート製剤で治療した骨粗粗鬆症患者の MRONJ 発生率は 0.104%( 10 万人当たり 104 人)と推定されました。
骨折予防によるメリットは、このごくまれな副作用のリスクを大きく上回ると言えます。

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■ MRONJ は予防できる
あごの骨は、歯を通じてお口の中の細菌と直接つながっているという、他の骨にはない特徴があります。
以前は「抜歯が最大の原因」と考えられていました。ところが近年の調査・研究によると、抜歯そのものよりも、歯周病や根尖病変などの細菌感染が主要なリスク因子であると示されています。
つまり、抜歯が必要になる前にお口の健康を保つことが、MRONJの最も重要な予防策なのです。
日常の歯みがきや定期的な歯科受診が、MRONJのリスクを大きく下げることがわかっています。
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■ 医科歯科連携の意義とは
日本口腔外科学会、日本骨粗鬆症学会、日本病院薬剤師会などで構成される「顎骨壊死検討委員会」があります。
そこから出された最新の指針では、骨粗鬆症治療前に医科から歯科へ紹介することを「強く推奨」しています。*4
つぎの4つにあてはまる方は、とくに受診の必要性が高いと言えます。
①1年以上歯科受診がない
②かかりつけ歯科がない
③噛みにくさや入れ歯の不具合がある
④痛み・腫れなどの症状がある
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当院整形外科では患者さんが安心して骨粗鬆症治療を始められるように、治療前に原則として全員に歯科受診をお願いしています。
歯がない方や入れ歯の方でも、受診をお勧めします 。合わない義歯が感染のもとになるからです。
紹介状(診療情報提供書)を作成しますので、患者さんはそれを歯医者さんに持って行くだけで大丈夫です。歯科診察の結果は後日、文書で当院に届くことになっています。
治療前はもちろん、治療中の歯科定期受診がベストです。
『丈夫な骨と健康な歯』— 骨粗鬆症治療は一石二鳥の効果をもたらすかもしれません。
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*1 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版, ライフサイエンス出版, 2025年7月30日発行
*2 Marx RE. Pamidronate (Aredia) and zoledronate (Zometa) induced avascular necrosis of the jaws: a growing epidemic. J Oral Maxillofac Surg 2003; 61(9): 1115-1117.
*3 藤森真樹, ほか.骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の発生と治癒に関する前向き多施設共同研究 −北海道東部 十勝, 釧路・根室, オホーツク医療圏における顎骨壊死発生率−. 日口外誌 2021; 67(10): 571-583.
*4 顎骨壊死検討委員会:岸本裕充, ほか. 薬剤関連顎骨壊死の病態と管理: 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023.
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