「痛いの痛いの飛んで行け〜」の真実

お知らせ
「痛いの痛いの飛んで行け〜」
— 最新科学が解き明かした「手当て」の秘密
■ 魔法の言葉に秘められた神経科学
幼い頃、親に痛いところをさすってもらうと不思議と痛みが引いた経験はありませんか?この「手当て」の仕組みが、2026年の最新研究によって神経レベルで解明されました。*1, 2
単なる「気休め、おまじない」ではなく、私たちの体に備わった精巧な防御システムが働いていたのです。
■ 60年前の「門」の理論
この現象の基礎となるのは、1965年に提唱された「ゲートコントロール説」です。*3
これは脊髄の中に痛みの信号を通したり遮断したりする「門(ゲート)」があるという考え方です。触った感覚を伝える太い神経が刺激されると、その門が閉じて、脳へ伝わる痛みの信号がブロックされると予測されていました。

ゲートコントロール説の概要(参考文献*3より引用)
■ ついに見つかった「鎮痛スイッチ」
2026年7月、九州大学の研究グループは、このゲートを閉じる役割を担う特定の触覚神経(Npy2r-Cre陽性神経)を世界で初めて特定しました。*1, 2
マウスを用いた実験で、この神経を取り除くと痛い場所を舐め続ける時間が長くなり、逆に人工的に刺激すると痛みが大幅に和らぐことが証明されたのです。
具体的な仕組みは以下の通りです。
・痛い場所をさすると、今回発見された特定の触覚神経(Aβ線維)が反応します。
・その信号が脊髄へ届き、脳へ痛みを送る神経(C線維)の活動を直接抑制します。
つまり、「さする」という物理的な刺激が、脊髄内にある痛みの遮断スイッチを実際にオンにしていたのです。この仕組みはマウスだけでなく、人間を含む多くの生物に共通している可能性が高いと考えられています。

参考文献*2より引用
■ それでも痛みが続くとき
痛いところを「さする」ことはだれにでもできる「応急手当」です。触れられることによって得られる精神的な安心感も鎮痛に役立っていると思われます。
お子さんがケガをしたとき、痛みを訴えたとき、まずはやさしくさすってあげてください。それでも泣き止まないとき、痛みが続くときは整形外科を受診してください。診察をしたうえで、「X線検査は必要か」「薬や処置は必要か」「一晩様子をみることでよいか」といったことを判断します。
■ これからの痛み治療への展望
今回の論文発表は、単なる言い伝えの証明にとどまりません。この特定の神経を効率よく刺激する新しい治療法や、経皮的電気刺激(TENS*)などの医療機器をより進化させる可能性があります。
* Transcutaneous electrical nerve stimulation
当クリニックでは科学的根拠に基づいたリハビリや治療を提案し、皆様の痛みが一日も早く「飛んで行く」ようサポートしてまいります。
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*1 Sueto D, et al. A population of primary afferent sensory neurons mediates pain relief through nocifensive coping behavior in mice. Proc Natl Acad Sci USA 2026; 123(29): e2601766123.
*2 九州大学広報課. 「痛いの痛いの⾶んでけ〜」は本当に効いていた!痛みを抑える触覚神経を特定. PRESS RELEASE, 2026/07/14
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/66769/26_0714_01.pdf
*3 Melzack R, Wall PD. Pain mechanisms: a new theory. Science 1965; 150(3699): 971-9.
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