冷シップは冷やさない

お知らせ
患者さんからよくされる質問があります。1日1回は聞かれます。
「冷シップがいいですか? 温シップがいいですか?」
—「どちらでもいいですよ」— が答えです。
冷感・温感は感覚刺激によるものです。「冷や〜っ」とすると気持ちいいときがあります。「ポカポカ〜」がいいときもあります。感覚的な好みで選べばいいのです。
冷シップの「冷や〜っ」は主にℓ-メントール、温シップの「ポカポカ〜」はカプサイシン (トウガラシエキス)またはノニル酸ワニリルアミドの作用によります。
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メントールは皮膚や口腔内の感覚神経末端にあるTRPM8という受容体に結合します。この受容体は通常、冷たい刺激に反応するものであるため、メントールが作用すると実際に温度が下がっていなくても、脳は「冷たい」という信号を受け取ります。*1
つまり、メントールは化学的に「冷たさ」を模倣することで、脳の注意を「痛みや熱」から「冷却感」へと転換させ、結果として痛みや疲労の感覚的な認知を書き換えていると言えます。
ただし、これらの効果はあくまで感覚的なものであり、深部体温や心拍数といった実際の生理的な状態を変化させるわけではありません。*2
缶ビールに冷シップを貼っても冷えませんよね。( 😂 )

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シップの主たる効果はその中に含まれる非ステロイド性消炎鎮痛薬 (NSAIDs*)にあります。
*NSAIDs: non-steroidal anti-inflammatory drugs
日本のシップには以下のような、NSAIDsが含まれており、たくさんの種類のシップがあります。
・インドメタシン
・ケトプロフェン
・フェルビナク
・フルルビプロフェン
・エスフルルビプロフェン
・ジクロフェナクナトリウム
・ロキソプロフェンナトリウム
大谷翔平選手がCMをしている〇〇テリンにはインドメタシンが入っています。
一方、アメリカ合衆国ではジクロフェナクナトリウムを含むシップしかありません。*3
日本人がどれだけシップ好きかがわかりますね。
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現在あるシップのほとんどは冷感タイプです。NSAIDsを含む温感タイプのシップは発売中止が相次いでいます。温感タイプはそのうち病院・医院からの処方薬としては姿を消すかもしれません。
温度変化を目的とするなら、氷冷(アイシング)やホットパックの方が圧倒的に効果的です。
冷シップ・温シップは「冷やす」「温める」を目的に使うものではありません。
*1 富永真琴. 温度感受性チャネル. 生化学 2022; 94(2): 236-257
*2 Peel J, et al. Topical application of isolated menthol and combined menthol-capsaicin creams: Exercise tolerance, thermal perception, pain, attentional focus and thermoregulation in the heat. Eur J Sport Sci 2023; 23(10): 2038-2048
*3 Stanos S. Topical Analgesics. Phys Med Rehabil Clin N Am 2020; 31(2): 233-244
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